築20年の建物は、構造補強、断熱改修、周辺環境への対応によって、二世帯が30年先も安心して快適に暮らすことができる建物となった。1階には親世帯、2階には子世帯の生活スペースが配置され、 二世帯を繋ぐスキップフロアのLDKが二世帯を程よい距離で繋いでいる。建物の正面が北東側に伸びる道路とほぼ垂直に交わっており、建物が「ここに建っている」と主張しているよう。 さらにファサードに縦に1本入れたラインによって、その感覚はさらに高まる。
建て主の新築当時の想いや今までの家族の歴史を、いつまでも忘れずにいられるようにと考えた設計者は、二世帯が集うスキップフロアのLDKの小屋組みをあえて見せることで、既存建物を常に感じることができるようにした。全てが新しくなってしまっても、周辺環境が大きく変わっても、今までの家族の歴史や想いは変わることはない。
「リノベーション」とは、建て替えずに、建物の経年にともない、時代に合わなくなった機能や性能を向上させ、価値を高めることである。そこに暮らす家族の歴史や想い、既存建物を尊重しながら、設計を行っていくことで、新しい価値を見出すことができるのだとキューブデザインは考える。建物に刻まれた家族の歴史や想いは、建物によって未来へと紡がれていく。