長年倉庫として使用されてきた建物。
周辺環境は年月を経過すると変わり、
辺りには新しい建物やマンションが幹線道路を取り囲むように並んでいる。
その中で昔から時代の流れを見てきたかのような建物は
周りから見れば特異なものに見えるかもしれない。
ただ、正面に見える重く錆びた鉄扉を開けると、
棟よりシンメトリーになっている素朴な空間は
素朴ゆえに歴史の記憶を閉じ込めたような重厚感も感じとれる。
採光のため波板で覆われていた開口部分はあえて潰し、
倉庫という外観イメージをそのまま残すため壁面には新しく窓を設けずに、
リズムよく並ぶ鋼材を跨ぐように屋根にトップライトを設けた。
トップライトを設けることで、外観イメージも崩さず、
小さな窓で最大限に光を取り込むことができる。
断熱材も同様に内部の構造感、歴史を感じる外観
のイメージを崩さぬよう、吹付断熱を採用し
構造を表したうえで断熱材表面、鋼材を白く塗装した。
トップライトから差す光が、
白くなった断熱材と鋼材の表面に反射し伸びるように各室まで光が届くようになる。
差し込む光も時間で表情を変えながら陰影がおぼろげに移り変わる。
ただ新しさだけを求めるのでなく、
すでにあるものを尊重し、そこに新しい可能性を
見出そうとする価値観が根付き始めたこの時代に
キューブデザインとして一つの回答が表現できた建物へと変わってゆく。