角地の家 episode

角地の家エピソード
通常表には出ないクライアントと設計者の打合せを追ってみた。

まず今回クライアントから依頼を受けた敷地は日々開発が進んでいる新興分譲地内の角地。

敷地の特性としては、

・バイパスを降りた通りとスーパーや衣料品店、飲食店などがある通りの交差点を目視できる位置にあり、買い物や公共交通機関、バイパスなどへのアクセスに優れている。
・北面と東面に6mの道路を有し、南面は空地になっているが近い将来、建物は建つであろうと考えられ、西面は太陽の光が入らなそうなほど、近い位置に建物が建っている。
・北面は商業店舗が建並ぶ通りが全て見渡せるほど長細い土地が広がっていて、お店から出てくる家族連れなどが見えるほど開けている。
・東面道路を挟んだ向かいには東屋などを擁する緑溢れる遊歩道があり、平日、週末問わず子供たちの遊ぶ声が聞こえてくる。

敷地を視察した設計者は以下のように感じた。

・分譲地の地区計画上、道路側から1.5m、隣の敷地から1.0mの範囲は建物が建ってはいけないので、総二階にならざるを得ず、背の高い建物が規則正しく並んでいる。さらに敷地自体に高低差がなく敷地の抑揚感を感じない。
・太陽の動きは東→南→西と流れるが、南面と西面は近い将来建物が建つであろう敷地と隣合っていて、南西方向からの採光が難しいと思われる。
・反対に北東方向は、長細い敷地と遊歩道に面しているため、開けた遠景を望める。

クライアントからの要望として、
1階にLDKを擁し、日当たりの良い場所がほしいというものであった。
ここでの問題が1階で南面方向に窓を有するLDKがあると、将来建つであろう隣家も近く採光が確保しにくくなるであろうことだった。南面に窓を設けても隣人が近く、常に気に掛ける生活を送ることにならないだろうか。

そこで設計者からクライアントへの提案は

・LDKを2階に設け、長細い敷地が広がる北面と、遊歩道を擁する東面から採光を確保できるよう開口とバルコニーを設け、「日当たりの良い場所」より「広く高い空が眺められる場所」を擁した。
・背の高い建物が規則正しく並んでいる街並みから、建物の高さを低くし建物の軽さ、浮遊感を構造で表現をした。
・地区計画の離れを利用し、建築不可能な空間に自然な地形の抑揚感、樹木の曲線、季節を感じる開花、紅葉、落葉で分譲地という人工的な周辺環境との差別化を図った。

というものであった。
多くの打合せ、意見の交換、提案、プランの磨き上げを重ね完成した建物は
外観により生み出された高さの抑揚を内部空間にも反映し、部屋を移るごとに感情の変化がうまれ、何か気持ちいい家に変わっていく。

「何か」は言葉や写真、映像では絶対に表現できない潜在的な感覚や感情。

今後開催されるオープンハウスの会場でぜひ体験していただきたい。